《レッスンレポート》

結婚披露宴での乾杯

今回の受講生さんは、40代の男性経営者。20年来の大親友が結婚されるとあって、乾杯の発声という大役を任されました。私は個人的に、披露宴の中で一番ハードルが高いポジションが、乾杯発声だと思っています。一般的によくある披露宴の流れとしては、①新郎側の来賓祝辞→②新婦側の来賓祝辞→③乾杯 という進行が多いです。①と②はその宴席の中での主賓、つまりもっとも偉い人という位置付けで、③の乾杯発声者はその次に偉い人、という暗黙のポジショニングなのです。

さて、時間的なタイミングでいくと、①新郎側主賓と②新婦側主賓をじっと聞いている会場内のゲストの中には少なからず、早く飲みたい・・・早く食べたい・・・と思っている人がいます。主賓2名の祝辞が終わって「さあようやく乾杯だ」となった時に長々話すのは、さらにアウェイ感を増す空気を自ら作り出すことになります。「乾杯!」と発声するまでに話す長さがは2分くらいで収めることをお勧めします。3分では長いです。

そして、乾杯はただの『お祝いの言葉』とは少し異なります。もちろん祝宴ですから、ベースにあるのはお祝いです。しかし、乾杯で必要なのは『なぜ(何の為に)杯をあけるのか』という言葉が必要です。いわゆる「○○を祝して」とか「○○を祈念して」などです。

このように、内容的にも立ち位置的にも、主賓祝辞よりハードルが高いのです。

結婚披露宴の祝辞や乾杯発声を頼まれて準備をするにあたり、強く強くお勧めしないのが、インターネットで挨拶のサンプル文を探すことです。これは、是非やめてください。インターネット上のどこを探しても、新郎新婦と貴方のこれまでの友情や思いは載っていません。誰もが喋るような、紋切り型の使い古された、誰の心にも響かない定型文を喋ってもらう為に、新郎新婦は貴方を指名したのではありません。

このような挨拶のレッスンでは、まずご自分が思うがままに原稿を書いてきていただきます。どなたも最初は、思ってもいないようなことを言わなきゃいけないと思い込んで喋ります。超絶つまらないのです。そこから、新郎(新婦)との関係性や思い出のエピソードなどをインタビューして、原稿を作り直し、大切な親友への自分の思い100%の素敵な原稿が出来上がります。

原稿さえ出来上がれば、あとの仕上げは早いものです。人前で喋る際の表現のポイントをお教えして練習すれば、見違えるようになります。一番難しいのは、いかに自分の思い(目に見えないもの)を自分の言葉で相手に伝わるようにするか、なのです。

今回の受講生さんも初めはどこかで聞いたような当たり障りのないことを話していました。しかし、話を聴き、思いを話していくうちに自分が何を伝えたいのかが整理されてきました。それは、『これまで自分は新郎に助けられ放しの人生だった。これからはそのお返しをしたい。いつでも駆けつけ何でも力になる。』ということでした。そこに思い出に残る実際のエピソードをひとつ加え、自分にしか話せない温かい2分間が完成しました。きっと素敵な披露宴になったことと思います。