《コラム》カミカミになる原因

思っていない思い

スピーチの個人レッスンをすることがあります。皆さんそれぞれの目的があります。結婚披露宴での祝辞、会社の周年記念式典での挨拶、様々な団体での挨拶・・・などなど。「今度、司会をするのでレッスンしてほしい」という方もいらっしゃいますが、司会とスピーチは全くの別物です。

さて、先日もとある会の代表を務める方の個人レッスンをいたしました。新年のご挨拶です。私は、必ずご本人に原稿を書いてからレッスンにお越しいただきます。私が取材をして原稿を書くこともできますが、ご本人が書かなければ意味がありません。

その日もご本人が書いてこられた原稿をもとにスピーチの練習をしました。2分弱の短めのご挨拶なのですが、全体を通してとても良い部分(良い=伝わる)とまったく良くない部分があるのです。その違いは明白。

まったく良くないのは、『このくらいのこと言っておかないとなぁ』と、ご本人が思って書いたパートです。一方、とても良い部分は、ご本人が本当に思っていることが書かれているパート。ここは思いが伝わってきて、しかも無駄にカミません。ご本人が思ってもいないのに書いたパートは見事に、カミカミなのです。

レッスンでは、そのような現象を体験していただき、原稿をバッサリ書き換えます。こうして書かれた原稿は、ご本人の思いがたっぷりつまったオリジナルなものになります。そして、思いがしっかり伝わるスピーチができあがるのです。

人前で話すときにカンでしまう原因はいくつかありますが、そのひとつが「思ってもいないことを無理に言おうとする」ことですね。